BIMとIFCとは?国際標準フォーマットの役割と今後の展望

BIMの利活用が進む中で、避けて通れないキーワードの一つが「IFC(Industry Foundation Classes)」です。
IFCは、BIMデータの相互運用性(データ連携)を実現するための国際標準フォーマットであり、ソフトウェア間の“共通言語”のような存在です。
本記事では、IFCとは何か、なぜ重要なのか、どのように使われているのか、またそのメリット・デメリットや今後の展望について、初めてBIMに触れる方にもわかりやすく解説していきます。
BIMについては、下記の記事もご覧ください。
【関連記事】
IFCとは何か
IFC(Industry Foundation Classes)は、建築・土木分野におけるBIMデータを、ソフトウェアの垣根を超えてやり取りできるようにするオープンな中立ファイル形式です。
- 拡張子:.ifc
- 開発元:buildingSMART International
- 目的:ソフトウェア間でBIMモデルの情報を正確に共有・再利用するため
IFCは、「CADでいうDXFファイル」のBIM版と捉えるとイメージしやすいでしょう。
AutoCAD、Revit、Archicad、Vectorworks、Navisworksなど、各種BIMソフトはそれぞれ独自のデータ形式(ネイティブ形式)を持っています。IFCはそれらを共通化し、異なるソフト間でBIMデータをやり取りできるようにする「橋渡し」の役割を担っています。
IFCが必要とされる理由
■ ソフトウェア間のデータ互換性の課題
BIM導入初期、多くの現場では異なるBIMソフトを使っていたため、データ連携が困難でした。
たとえば、設計はRevit、Archicad、施工はNavisworksというケースでは、ソフト間のオリジナルファイル形式の違いによって「データが開けない」「一部情報が消える」といった問題が頻発しました。
■ プロジェクト全体でBIMデータを有効活用するため
建設プロジェクトでは、設計、施工、維持管理など多くのステークホルダーが関与します。
プロジェクト参加者全員がBIMの恩恵を受けるには、共通のデータ基盤(=IFC)が必要不可欠です。
■ 国際標準化への対応
IFCはISO(国際標準化機構)にも認定された国際規格(ISO 16739)であり、世界中の公共機関や民間プロジェクトで活用が進んでいます。
日本でも国土交通省が推進する「BIM/CIM原則適用」の中で、IFCの活用が前提になることが多くなっています。
出典:第11回 BIM/CIM推進委員会 資料1より
IFCとOpenBIMの関係
「OpenBIM(オープンBIM)」とは、特定ベンダーに依存しない、中立的かつオープンな情報交換を可能にするBIMの考え方です。IFCはその中核技術として機能しています。
項目 |
IFC(ファイル形式) |
OpenBIM(概念) |
内容 |
ソフト間でデータを共有するためのフォーマット |
ベンダー中立なBIMの運用思想 |
提唱団体 |
buildingSMART International |
同左 |
関係 |
OpenBIMを支える主要な技術の1つ |
IFCはOpenBIMを実現する手段 |
OpenBIMを採用することで、企業や組織のBIM環境がソフトウェアの制約を受けず、長期的・柔軟に活用可能になります。
IFCのメリット・デメリット
メリット
・ソフトの垣根を越えてBIMデータを連携出来る。
⇒設計~施工~維持管理で異なるBIMソフトを使っていても情報共有が可能。
・長期保管・再利用に適している。
⇒ネイティブ形式が廃れても、IFCであれば再利用の可能性がある。
・国際基準なので公共事業対応がしやすい
⇒国際プロジェクトや政府調達案件での必須要件となりやすい。
・オープン形式でライセンスフリー
⇒商用ソフトに依存せず、自由に利用可能。
デメリット
・モデル情報が一部失われる可能性がある。
⇒ソフト固有の情報(パラメータや属性)が完全には引き継げない場合ある。
・ファイルサイズが大きくなりがち
⇒データ量が多いため、PCに負荷をかけることも。
・各ソフトによるIFC変換精度に差がある。
⇒出力・読込の精度はソフトやバージョンに依存。
このように「完全互換」ではなく、「高精度の共有」というイメージを持つと良いでしょう。
IFCの活用事例と今後の展望
【日本における活用事例】
- 国土交通省:BIM/CIM原則適用業務にてIFCモデル提出を推奨・要求
- 大手ゼネコン:設計と施工の情報連携、4D/5D施工管理、FM連携にIFCを活用
- 地方自治体:公共建築の維持管理データをIFCで標準化して長期保存
【今後の展望】
- 土木CIM対応の強化:橋梁・トンネルなどインフラ構造物へのIFC適用拡大
- FM(維持管理)分野との連携深化:施設管理向けのデータ構造化が加速
IFCは今後、単なる「データの受け渡し」から、「プロジェクト全体の基盤情報モデル」へと進化していくと予想されています。
まとめ
IFCは、異なるBIMソフト間での情報連携を実現するための国際標準フォーマットであり、BIMの真価を引き出すために欠かせない存在です。
OpenBIMの中核技術として、世界中のBIMプロジェクトで採用が進んでおり、公共・民間を問わず利用が拡大しています。
日本においても、IFCはBIM普及の鍵となる要素であり、今後のBIM活用においてその重要性はさらに高まるでしょう。
株式会社リビックでは、IFC形式での納品にも対応した高品質なBIMモデリングサービスを提供しています。
「他社ソフトと連携できるか不安」「IFCデータを維持管理まで活かしたい」といったお悩みにも対応可能です。
相談のみでも問題ありませんので、まずは一度お気軽にお問い合わせください。
提供サービスの詳細は、こちらのページにてご覧いただけます。
BIMサービス
https://livic-eng.com/service/bim/
CIMサービス
https://livic-eng.com/service/cim/