BIM/CIMにおける詳細度(LOD)とは?LOIとの違いや国交省の指針も解説

BIM/CIMを導入・活用する上で避けて通れないのが、「LOD(Level of Detail/Development)」の理解です。モデルにどの程度の情報を持たせるべきか、どの段階でどこまで表現すればよいのか。
それを判断する基準となるのがLODです。また、しばしば混同されがちな「LOI(Level of Information)」との違いや、国交省が示す指針にも目を通しておくことで、より適切な設計・施工・維持管理のプロセスを構築できます。
本記事では、BIM/CIMにおけるLODの基本から、各段階の違い、国の方針、実務での注意点までをわかりやすく整理しました。
LODとは?LOIとの違い
BIM/CIMにおいて、LODとは「Level of Detail」または「Level of Development」の略であり、3Dモデルにおける形状の作り込み具合を示す指標です。
国土交通省が定めたガイドラインでも、LODは100から500までの5段階に区分され、それぞれ設計から維持管理までのどの工程に対応するかが明確にされています。
一方、LOI(Level of Information)は、形状ではなく、属性情報の充実度を示す指標です。
例えば、部材の名称やサイズ、材質、施工年など、モデルに付随する情報の“深さ”がLOIで表されます。
両者の違いは以下のとおりです。
指標 |
意味 |
内容の中心 |
目的 |
LOD |
Level of Detail |
形状の詳細度 |
干渉チェックや図面出力等 |
LOI |
Level of Information |
属性情報の詳細度 |
維持管理や台帳連携等 |
このように、LODとLOIは別々の軸でありながら、両者のバランスによってモデルの有用性が決まるといえます。
LOD100~500の比較とその解釈
以下の表は、BIM/CIMで用いられるLOD(100~500)の段階をまとめたものです。
LOD |
モデルの特徴 |
形状精度 |
属性情報の充実度(LOI) |
主な利用目的 |
100 |
概念レベルのモデル |
非常に簡易、ボリューム感程度 |
最小限(位置や用途程度) |
基本構想、予算立案、ゾーニング |
200 |
概略モデル |
概ねの形状、配管・通路のルート等 |
概略情報(部材区分など) |
基本設計、配置検討、コスト算出 |
300 |
設計詳細モデル |
実施設計に対応できるレベルの形状 |
詳細属性(寸法、仕様、材質) |
干渉チェック、施工図作成 |
400 |
製作・施工モデル |
実際の施工や加工に使える精度 |
高精度な部品情報 |
作業指示、部材加工、現場施工管理 |
500 |
竣工・現況反映モデル |
実物と一致する完成状態の形状 |
完全属性(台帳情報、点検履歴) |
維持管理、点検、更新計画 |
このように、LODの数値が上がるほどモデルの詳細度は高くなりますが、その分、作成・管理の負荷も増加します。
そのため、プロジェクトの目的に応じた適切なLOD設定が必要不可欠です。
現在では概ね詳細度300~400相当のモデルが一般的に作成・活用されています。
LODが求められる主なフェーズ
LODは、BIM/CIMモデルをどの場面で、どの精度で利用するかを示す基準にもなっています。
フェーズ |
推奨LOD |
活用目的 |
基本構想・概念設計 |
LOD100 |
施設配置、概算コスト検討、検討用イメージ |
基本設計 |
LOD200 |
配置計画、設備配置の調整、概略数量算出 |
実施設計 |
LOD300 |
干渉チェック、設計図面の作成、発注準備 |
施工フェーズ |
LOD400 |
施工計画、加工指示、ICT施工連携、干渉チェック |
維持管理フェーズ |
LOD500 |
点検、修繕計画、長寿命化対応、FM活用 |
公共工事の場合は、設計段階でLOD300以上が求められることが多く、施工・維持管理においてはさらに精度が上がる場合があります。
国交省などによる指針と方針
国土交通省を中心とした公共機関では、BIM/CIM活用においてLODを具体的に示すガイドラインを整備しています。代表的な指針は以下のとおりです。
- 「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」
→ LOD100~500の段階区分を明示し、活用目的別に推奨LODを記載。
出典:BIM/CIM活用ガイドライン(案) (R3.3)
共通編の他、河川、道路、港湾等、それぞれガイドラインが整備されています。
これらにより、発注者・受注者ともに「どの段階で、どこまで作り込むのか」について合意形成がしやすくなっています。
LOD活用のメリットと注意点
メリット
- モデル品質が定量的に管理できるため、作業の見積もりや計画が立てやすくなる
- プロジェクト関係者間での情報共有がスムーズになり、手戻りが減る
- 干渉チェックや数量拾いが正確に行え、コスト管理の精度が上がる
注意点
- LODが上がるほど、モデリングの手間・データ容量・作業工数が急増
- ソフトウェアによってLODの解釈に差があるため、共有ルールが必要
- LOI(属性)との総合的な運用が求められる
適切なLODを設定せず、やみくもに精度を高めようとすると、非効率で“使えないモデル”になる恐れがあるため注意が必要です。
実務でのLOD運用ポイント
実務の中でLODを効果的に運用するには、以下の点を意識することが推奨されます。
- BEP(BIM実行計画書)でLODとLOIを明記し、段階的な管理ルールを作る
- 契約時点で、成果品のLODを明文化し、責任範囲を明確にする
- 意匠・構造・設備など複数部門でLODの整合を取りながら運用する
- 目的に応じて、“必要以上のLODは求めない”判断も重要
実務上は、最低限必要なLODとLOIを見極め、それを共有して使えるモデルを作ることがポイントです。
特に発注者との協議の中で、成果品のLODを相互に十分確認した上で作業を進めることが重要です。
モデリングをある程度終えたあと、詳細度を”落とす”、”上げる”作業はとても手間になるため、無駄な工数を回避するために注意が必要です。
まとめ
LODは、BIM/CIMモデルの形状精度を示す非常に重要な指標です。
国交省のガイドラインにも体系的に定義されており、公共工事を中心にその重要性はますます高まっています。
- 目的に合ったLODを設定する
- LODとLOIを組み合わせて運用する
- 必ず成果品の共通認識を確立する
こうした取り組みが、モデルを“活用できる資産”として管理・運用していくための第一歩になります。
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