LandXMLとJ-LandXMLの違いと活用の方向性について

ICT施工が標準化されつつある現在、施工用3次元設計データの整備が設計者にとっても“現場目線での設計品質”を問われる時代になっています。
その中で特に重要となるのが、LandXMLおよびJ-LandXMLという2つのデータ形式の理解と運用です。
この記事では、ICT施工と設計BIM/CIMの中間をつなぐキー技術である「J-LandXML」について、LandXMLとの違い、活用の狙い、作成時の注意点までを技術者向けに詳しく解説します。
LandXMLとは?
LandXML(ランドエックスエムエル)は、
元々欧米で開発された土木設計・測量分野におけるXMLベースのデータ交換フォーマットです。
【特徴】
- オープン形式で、地形、線形、断面、構造物などの情報を記述可能
- ソフト間での設計データ交換に利用されてきた(例:Civil 3D、Trimble、Topconなど)
- 国際的には広く普及しているが、日本の設計・施工業務との“文化的ズレ”があった
J-LandXMLとは?
J-LandXML(ジェイ・ランドエックスエムエル)は、
LandXMLをベースにしつつ、日本の土木設計・施工実務に合わせて国土交通省が独自拡張・標準化した形式です。
【特徴】
- 国交省が「3次元設計データ交換標準(案)」として2020年に整備
- ICT施工に対応するための必要情報(横断・法面・構造物の境界)を構造的に記述
- 面データ(TIN)、線形(Alignment)、幅員(Cross Section)、属性情報(LOI)などを明示的に記述
- 多くのCIM対応ソフトがJ-LandXML出力に対応しつつある
(注:Autodesk社 Civil3Dは単体でJ-LandXMLを書き出せません。J-Tool, CALS Toolが別途必要となります)
LandXMLとJ-LandXMLの違い
項目 |
LandXML |
J-LandXML |
出自 |
海外で開発(英語ベース) |
国交省が日本向けに拡張・標準化 |
対応範囲 |
地形、線形、構造物など広範囲 |
日本の設計図書形式(道路・法面・構造)に準拠 |
表現の厳密性 |
記述方法がソフト間でバラつきがある |
構文・要素が明確に規定されており再現性が高い |
ICT施工対応 |
限定的 |
ICT建機・施工管理ソフトで直接読込可能 |
国交省の立場 |
特に標準化はしていない |
原則としてICT施工における |
つまり、LandXMLがグローバルな共通言語だとすれば、J-LandXMLは日本の現場に即した“方言付きの共通言語”と言えます。CIMモデルの納品やデータ連携を行ううえで、日本国内での公共事業ではJ-LandXMLへの対応が必須となってきています。
なぜJ-LandXMLが必要なのか?
ICT施工において、設計データをICT建機へ正確に渡すためには、国や機械メーカーが共通で理解できる構造が必要です。
J-LandXMLは、以下の理由でICT施工に不可欠とされています。
必要性 |
内容 |
データの統一 |
ソフトや発注者によってバラバラだった表現方法を共通化 |
ICT建機との連携 |
国交省の直轄工事で使用されるICT建機が読み取り可能 |
施工誤差の削減 |
設計線形・幅員・法面が明示されているため、施工精度が安定 |
電子納品・出来形管理との連携 |
ICT施工の出来形評価データ(LandXML形式)と |
J-LandXMLの活用シーン
J-LandXML形式のデータは、以下のような実務で活用されます。
活用シーン |
内容 |
ICT施工(3DMC・MG) |
ICT建機への設計面データ(TIN)と中心線(Alignment)を提供 |
電子納品対応 |
国交省等の直轄工事での電子納品書類に組込み |
設計・施工一体業務 |
設計から施工への一貫データフローの中間データとして活用 |
設計成果品の納品 |
3次元設計成果として図面と合わせて納品(CIMモデルの補足) |
J-LandXMLの作成方法と注意点
作成方法の基本フロー
- 2D設計図面から中心線(Alignment)と縦断情報を抽出
- 幅員情報(Cross Section)を定義し、法面展開を行う
- 完成地形(TIN Surface)を生成
- 構造物情報(壁高、法肩、法尻)などを属性情報として記載
- J-LandXML形式で出力(ソフトによってはテンプレート対応あり)
- ビューアで構文・形状チェックを行い納品形式に整備
作成時の注意点
注意点 |
説明 |
単位の統一 |
m単位で統一すること。変換ミスに注意。 |
サーフェスの不連続防止 |
地形の分割やTINのギャップがあると建機で読み込めない場合あり。 |
属性の記載ミス |
"法面勾配" "構造区分" などが欠落すると施工用途で使えない。 |
出力後のチェック |
Viewerなどで事前にエラーチェックすることが重要。 |
まとめ
J-LandXMLは、ICT施工と設計業務をつなぐ標準フォーマットであり、これからの設計業務において避けては通れない要素です。
- ICT施工を意識した「使える」データを作ること
- 構造化された3Dデータで発注者・施工者とスムーズに連携すること
- 国交省のガイドラインに準拠した納品体制を整えること
これらが設計者に求められる時代になっています。
J-LandXMLはただの形式ではなく、施工との会話における共通言語です。
株式会社リビックでは、J-LandXMLデータの作成・フォーマット変換・出力支援まで一貫対応可能です。
公共工事・業務におけるBIM/CIM実施計画書・報告書作成支援もお任せ下さい!
提供サービスの詳細は、こちらのページにてご覧いただけます。
BIMサービス
https://livic-eng.com/service/bim/
CIMサービス
https://livic-eng.com/service/cim/