【建築・土木向け】点群データを活用した3Dモデリングの実務上のポイント

近年、BIM/CIMやICT施工の普及により、建築・土木分野では設計・測量・施工・維持管理のすべてにおいて3次元データの活用が必須となっています。特に点群データは、現地の情報を正確に取得し、3Dモデル化するための基盤となる重要な技術です。本記事では、初めて点群データや3Dモデリングを学ぶ方にも理解できるよう、実務で押さえておくべきポイントを整理しました。
- 1. 点群データとは何か?3Dモデリングとの関係
- 2. 取得前の計画と現場調査の重要性
- 3. 建築分野における点群データ活用の実務ポイント
- 4. 土木分野における点群データ活用の実務ポイント
- 5. 点群データから3Dモデルを作る際の注意点
- 6. 処理効率と品質管理の工夫
- 7. まとめ
1. 点群データとは何か?3Dモデリングとの関係
点群データとは、レーザースキャナーやドローン、モバイルマッピングシステムなどで取得される多数の座標点の集合です。各点はX, Y, Z座標を持ち、現場の形状や構造物の位置情報を高精度で表現します。
点群データを3Dモデリングに活用することで、以下の利点があります。
- 現況情報を正確に反映したBIM/CIMモデルの作成が可能
- 施工計画や設計変更、維持管理の基盤データとして利用可能
- 国交省のi-Construction 2.0に沿ったICT施工やCIM整備への対応が容易
取得した点群データは、モデル化の対象に応じて「建築意匠」「構造」「設備」「土木構造物」「地形」などに分類され、それぞれの精度や解像度要件に応じて処理されます。
点群データ関連記事;
・点群データ活用の最新トレンドと効率的モデリング手法まとめ
2. 取得前の計画と現場調査の重要性
点群データ取得はただレーザーを照射すれば完了というものではなく、事前の計画が成果物品質を大きく左右します。現場状況に応じて、以下の観点で計画を立てることが重要です。
- スキャン位置の選定(死角を最小化)
- 計測密度・解像度の設定(重要箇所は高密度)
- 周囲環境の確認(交通、植栽、照明条件など)
- 安全対策や作業時間の調整(夜間作業や通行規制の検討)
これらは国交省の「公共測量マニュアル」や「CIMガイドライン」に基づき、設計・施工・維持管理フェーズでの活用を意識して計画することが推奨されます。
また、スキャナが精密機械であることから雨天時の結構は避けた方が良いでしょう。
事前に天気予報等で確認を行い、事前調査日やスキャン日程を確定させることが重要です。
小雨程度だからといって無理に決行してしまうことで機器が故障してしまう可能性もあるため、確実な条件のもとで行うことがベストでしょう。
依頼主にも予め「雨天時は延期等の対応を取る」など事前に伝えておくことで双方納得した上で再調整も可能となるため、細やかな準備と配慮が大切です。
3. 建築分野における点群データ活用の実務ポイント
建築分野では、外観・内観のスキャンによって設計・施工・維持管理のさまざまな場面で活用可能です。
外観スキャンのポイント
- 複数視点からの取得で死角を補完
- ガラスや金属面の反射を考慮した角度設定
- 改修設計や外壁調査に直結する高精度点群を確保
内観スキャンのポイント
- 狭小空間や家具設備に応じた複数位置での取得
- 照明や鏡面反射への配慮
- 維持管理BIMやリノベーション計画で活用可能な精度確保
死角が増えたからその分スキャン数を増やせば良いとなると、その分取得する点群データ容量が膨れ上がるため、取得後の処理工程が長引いてしまうことがあります。
その場合、取得点群密度を変更出来るようなスキャナであれば、家具有り空間は低密度で複数点取る、スケルトン空間は高密度で数か所取る、など出来るだけ必要十分な点群データを効率よく取得していく工夫が必要となります。
但し、内観に存在する家具・什器等もモデリングが必要な場合は、時として高密度の点群データが必要になることもあります。
あくまでもその現場の条件、依頼主の求める成果、精度、を基にベストな点群取得方法を選択しましょう。
4. 土木分野における点群データ活用の実務ポイント
土木分野では、構造物スキャンと地形スキャンに分けて実務ポイントを整理します。
| 対象 | 取得上の注意 | 活用例 |
|---|---|---|
| 橋梁 | 桁下や裏面の死角、鋼材反射、コンクリートひび割れ | 変位計測、損傷検知、維持管理計画 |
| トンネル | 交通規制下での夜間取得、湿気・粉塵によるノイズ | 変形監視、補修設計、施工管理 |
| 地形 | 法面の死角、植生・積雪の影響、解像度調整 | 設計計画、土量算定、災害復旧計画 |
対象物や対象範囲(面積)によって使用するスキャナの検討も行いましょう。
地上レーザー機器が適切か、UAVレーザーが適切か、ハンディスキャナ(SLAM等)が適切か、など、現場条件や成果品の目的によって最も効率的且つ確実な手法を選定することが大切です。
取得時には国交省「i-Construction 2.0ガイドライン」やCIMガイドラインに沿った精度・解像度の確保が重要です。
5. 点群データから3Dモデルを作る際の注意点
点群データをそのまま3Dモデルに変換することはできません。効率的にモデリングするためには、以下の注意点があります。
- 不要点削除やノイズ処理を事前に実施
- 必要な詳細度(LOD)に応じたモデル化
- 設計・施工・維持管理それぞれで使用する属性情報を整理
また、建築・土木で異なる要件を整理した上で、専用ソフトウェアや外部委託を活用して効率的にモデル化することがポイントです。
リビックの3Dスキャンサービスでは、こうした点群処理とBIM/CIMモデリングをワンストップで提供しています。詳しくはこちら。
6. 処理効率と品質管理の工夫
大量の点群データを扱う場合、処理効率と品質管理が重要です。以下の工夫が効果的です。
| 課題 | 工夫・対応策 |
|---|---|
| 膨大なデータ量 | 不要点削除、クラウド活用、解像度調整 |
| モデル化時間の長さ | 自動化ツールの活用、外部委託、AIによるノイズ除去 |
| 精度管理 | ターゲット設置、多視点スキャン、国交省基準に基づく検証 |
これにより、設計・施工・維持管理で活用可能な高品質な3Dモデルを効率的に作成できます。
また、点群データの処理作業を多くこなしていくことで効率的に進める手法を徐々に理解していきます。
まずは容量の小さな点群データの処理・加工から挑戦することで、自身の処理スピードや使用しているPCやソフトウェアの性能を理解することが出来ます。
突然大量の点群データを扱い始めると、ある程度の処理能力を持ったPCでないとフリーズして作業が前へ進まず、予定していた作業時間を大幅に超えてしまうこともあり得るため注意が必要です。
関連記事
・BIM/CIMモデルの軽量化・効率化テクニック
7. まとめ
建築・土木分野における点群データの3Dモデリングは、BIM/CIMやICT施工の基盤であり、以下のポイントが重要です。
- 取得前の計画と現場調査による死角や反射対策
- 建築では外観・内観の精度確保、土木では構造物・地形ごとの最適解像度設定
- 取得データの整理・ノイズ除去・LODに応じたモデル化
- 処理効率と品質管理の工夫で、設計・施工・維持管理に活用可能
初学者でもこれらの流れを理解することで、BIM/CIMやi-Construction 2.0に沿った3Dモデリングの実務にスムーズに入ることができます。
より詳細な点群活用事例や効率的モデリング手法は、当社過去記事も参考にしてください。
BIMサービス
https://livic-eng.com/service/bim/
CIMサービス
https://livic-eng.com/service/cim/
3Dスキャンサービス
https://livic-eng.com/service/3d-scan/
また、リビックの提供サービスをまとめた紹介資料もご用意しておりますので、ぜひ一度ご覧ください。
資料はこちらのページよりダウンロードできます。