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お役立ちコラム

【製造業必見】製造現場におけるBCP対策の新常識 -3次元データで守る設備と人-

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地震・豪雨・停電・サプライチェーンの分断など、自然災害や予期せぬトラブルが製造現場に与える影響は年々深刻化しています。特に南海トラフ地震のような巨大災害が懸念される今、「生産を止めないための備え」=BCP(Business Continuity Plan):事業継続計画が、製造業にとって最重要課題の一つとなっています。

本記事では、3次元データやBIMモデルを活用した新たなBCPの形を解説します。Revitによる設備・配管モデリングから、耐震解析、維持管理BIMを通じた継続的なリスクマネジメントまで、“3次元データで守る設備と人”という視点から、その実用性と将来性を詳しく紐解きます。

目次

1. なぜ今、製造業にBCP対策が求められているのか

近年、地震・豪雨・停電・パンデミックなど、多様なリスクが製造現場を脅かしています。特に南海トラフ巨大地震は、発生確率が30年以内に70〜80%と高く予測されており、工場・倉庫・生産ラインが直接被災する可能性も決して非現実的ではありません。

従来のBCPは「代替拠点の確保」「在庫・供給の分散」「マニュアル整備」が中心でしたが、これからは“設備や建屋の構造そのものをデジタルで理解し、災害時の被害を可視化・予測する”フェーズへと進化しています。その中心となるのがBIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling)などの3次元モデルの活用です。

2. 3次元データが変えるBCP ― BIM/CIMの役割

BIM/CIMモデルは、建物や構造物だけでなく、工場内の配管、製造設備、搬送ラインまでを3次元で一元管理できるデジタル資産です。
BCPの観点では、次のような有用性があります。

活用項目 内容 期待できる効果
構造情報の可視化 建屋・柱・梁・基礎の3Dモデル化 耐震補強箇所の特定、危険部位の早期把握
設備・配管のモデル化 配置・支持方法・経路の可視化 落下・破断リスクの分析、復旧計画立案
維持管理情報の統合 型番・設置日・メンテ履歴を付与 点検・交換サイクルの最適化
シミュレーション活用 解析ツール連携(例:Midas GEN) 被災リスクの定量評価、対策効果の検証

BIMデータを活用することで、“平時の設計データが有事の判断材料になる”という新しいBCPの形が実現します。

既に設計、施工段階でBIMデータを活用している事例もありますが、それ止まりとなっている例も少なくありません。
3次元モデルは目的によって作り込み度合(詳細度)は変わりますが、資産であることには変わりありません。

設計や施工段階における単なる素材ではなく、維持管理やBCP観点における優秀なデジタル管理リソースとなり得るポテンシャルを秘めています。
3次元モデルを制作する段階で事前にどういった目的・意図で行うのかを十分に精査した上で取り掛かるようにしなければ無駄な時間やコストがかかってしまうため注意が必要です。

参考記事:BIM/CIMモデルの軽量化・効率化テクニック

3. 維持管理BIMを活用した設備・配管のリスク可視化

「維持管理BIM(FM BIM)」とは、建物や設備の維持・保全・更新に関する情報を3Dモデル上で統合管理する仕組みです。製造現場では、機械設備・配管・電気盤・配線経路などの膨大な情報を「点群+BIMモデル」で再現し、部位ごとの危険度や補修履歴を可視化することが可能です。
※維持管理システムを導入する際は全てBIMモデル(*.IFC)を利用した上で属性情報を付与します。

たとえば、耐震診断の結果を属性情報としてモデルに記録することで、どの配管が地震時に破断する可能性があるか、どの設備がアンカーボルト不足で転倒リスクを抱えるかといった“点検情報の地図化”を実現します。

また、維持管理BIMはクラウドシステム上で運用できるため、災害直後にも現場に行かずに位置を確認し被害状況の把握を行うことができ、BCP体制の中核を担う存在となります。

リビックでは維持管理BIMの活用/運用を支援しております。プラント等の建造物を丸ごとBIM化することは時間、コストを要しますが、ランニングコストの削減やBCP観点で考えた時に必ず効果が出ると考えております。
製造業のみならず、不動産管理(BM、AM等)業界では既に維持管理BIMを取入れて運用している企業も徐々に増えてきております。

参考記事:維持管理BIMとは?その役割やメリット、導入のポイントを解説

4. 耐震シミュレーションの流れ

工場全体や各設備におけるBIMモデルを保有している企業も多い中、それを活かしきれていないことも多いのが現状です。
現在製造業の現場で特に注目されているのが、BIMモデルを使った耐震解析です。ここでは、代表的な解析フローの一例を紹介します。

  1. RevitでBIMモデルを作成: 建屋、架台、配管、設備機器などを忠実に3Dモデリング。構造材には断面・材質・接合情報を付与します。
  2. 解析ツールへモデルデータをエクスポート: IFC形式などを介してRevitモデルを解析ツール(ex. Midas GEN)へ連携。節点・部材情報を正確に引き継ぎます。
  3. 荷重・地震波の設定: 任意地震を想定した加速度波形を入力し、実地震動解析を実施します。
  4. 解析・評価: 各部材の応力度、変形量、共振モードを解析し、危険部位を抽出します。
  5. BIMモデルへのフィードバック: 結果をRevitモデルへ戻し、リスク箇所を可視化。維持管理BIMの属性情報として登録します。

この解析により、設備の耐震性・配管の変位・基礎の応答などを定量的に評価でき、BCP策定時の根拠資料として活用可能です。

5. BIMモデルを用いたBCPのメリットとデメリット

項目 メリット デメリット
精度 実際の構造・設備を忠実に再現可能 点群やBIMデータの精度確保に手間
コスト 長期的には保守費・再設計コストを削減 初期構築コストが高い傾向にある
効率 設計・施工・維持のデータ連携が容易 データ量が膨大になりがち
運用 BCP・点検・改修などに二次活用できる BIM人材・解析スキルが必要

BIMは「一度作れば終わり」ではなく、継続的に更新・活用してこそ価値を発揮します。BCP観点では、平時に精度高いBIMを整備しておくことが、有事の迅速な判断と被害最小化につながります。

6. 既存工場と新設工場、それぞれに必要なBCPアプローチ

既存工場の場合:

  • 点群スキャンで現況を3D化し、構造や配管の老朽化を可視化。
  • 耐震シミュレーションを通じて、脆弱箇所の補強計画を策定。
  • 維持管理BIMを整備し、定期点検・更新を効率化。

新設工場の場合:

  • 設計段階からBIMモデルを導入し、耐震設計・避難経路・復旧計画を統合的に計画・管理。
  • 設備・配管モデルをRevit等で設計し、将来のBCP・FMに直結する構造情報を付加。
  • 初期段階で解析を実施し、防災設計+維持管理BIM連携を前提とした工場DXを構築。

どちらのケースでも、「設計段階からBCPを意識したモデリング」が最重要ポイントです。
既存工場の場合、竣工から長期間経過していると増床や改修によって当時の竣工図から大幅に変更になっていることも多々あり、併せて変更後の正しい図面が残されていないことがあります。改修当時の担当者の頭の中に設計図が入っているということもあり、属人的になってしまうケースも少なくありません。

まずはこのような課題を解決するために、自社で保有する資産を整理するため点群データの取得からBIMモデルの制作を行い、BCPやFMに向けた整備を行なっていくところから始めるのが良いでしょう。

7. まとめ:3次元データで築く「止まらない製造現場」

BIMモデルや3次元データは、単なる設計ツールではなく、BCP・防災・維持管理の基盤として位置づけられる時代に突入しています。特に製造業では、建屋・配管・生産ラインが密集し、被害の連鎖が起こりやすく、人命に関わることもあります。そのため、3Dによる構造理解とシミュレーションが欠かせません。

南海トラフ地震クラスの災害を想定したとき、「どの設備が止まり、どの配管が破断するか」を事前に把握しておくことが、大切な命を守り、事業を継続させる手段となります。

決して不安を煽るわけではありませんが、近年の国内災害発生状況を振り返っても、毎年のように「過去最大級の台風」「河川の氾濫」「地震による建物倒壊」「土砂崩れ」等が全国各地で起きており異常気象とも取れる状況が続いています。”私たちは大丈夫”という想いから甚大な被害を及ぼす可能性もあるため、有事に備えて対策を講じることが重要となります。

リビックでは、RevitによるBIMモデル構築から解析、維持管理BIM化まで、工場設備のレジリエンス強化を支援しています。
BCP対策をこれから強化したい企業様は、ぜひ一度ご相談ください。

BIMサービス
https://livic-eng.com/service/bim/
CIMサービス
https://livic-eng.com/service/cim/
3Dスキャンサービス
https://livic-eng.com/service/3d-scan/

また、リビックの提供サービスをまとめた紹介資料もご用意しておりますので、ぜひ一度ご覧ください。

資料はこちらのページよりダウンロードできます。



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